日々想々彼是落書致候


by fly_bird_man
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秋だね、という書き出しで とりとめない

 秋だね
 どこか見たことのない、でなければ懐かしい、そんな風景の中に行きたい
・・・
 旅に出る理由はこれといって特段ないけれど、なんとなくふらっとした旅情を誘うのが秋というもの。夏休みの里帰りや家族旅行とはワケが違う。出張は旅と呼ぶにはあまりにもせわしない。さね。
 秋の旅には目的などないほうが良い。本当は期限もないほうが良い。早く帰ってきたければ帰って来ればいいし、ぶらぶらしていたければ飽きるまでぶらぶらしていればいい。住み着きたければ住んでしまえばいい。のにな。
 でも矢張り、そうとばかり言ってられない。食い扶持があり、暮らしがあり、住処にも銭にも時間にもスピードにも、限りがあるのが浮世というもの。なのよ。



 そう思うと、あんまりあちこち無闇に出歩くのも、とたんに億劫になっていく。旅にかかる時間と金銭とが、とたんに惜しく思えてくる。こうなるともう、旅先であっても銭勘定と出勤日からのスケジュールばかりが気にかかってきて、旅情どころではなくなってくる。
 そんなときには、出かけるのはせいぜい近所の喫茶店や公園にしておいて、読書するが良い。読書もまた、旅のようなものだ。自分が今までに感じたり考えついたりしたことのない景色を、言葉を通じて見聞きし、体験していく。なんとも言えぬ感慨をもたらしてくれる文章からは、匂いさえ湧き立ってくる。それは清清しい水の流れの淵に生い茂っている苔の群落がはなつ青臭い匂いだったり、レモンやミカンのピカピカに光る皮から放たれる甘酸っぱい匂いだったり、匂いで匂いを二重にも三重にもブ厚く塗りたくったようなむせ返るほどの化粧の匂いだったり。そんな匂いとともに、文章は心に刻まれていく。
 逆に、匂いのしない文章からは、あまり何かを得たという思いは少なくて、読み終えてもすぐに記憶から薄れていってしまう。

 秋の匂いというと何が思い浮かぶだろうか。脂の乗った秋刀魚がジュウっと焼ける匂い。茹であげた後、固い皮を歯でがりがりやりながら剥いて出てきた黄色い栗の身の匂い。実りの季節だから、食べ物の匂いがどうしても多くなるな。その他には、なんとなくこのまま腐り果てて土に返っていくのだなという、微かな腐敗の匂いを伴う紅葉の匂い。などかな。

 何も目的を決めずに書き進めてここまで来た。これもまた「旅」。というとあんまり大げさ過ぎるので、散歩のようなものだな。と思う。
by fly_bird_man | 2005-10-05 22:18 | raku gaki